アンドリュー・リー - ウィキペディア・レボリューション―世界最大の百科事典はいかにして生まれたか

発展のプロセスがよくわかる。

ウィキペディア・レボリューション―世界最大の百科事典はいかにして生まれたか (ハヤカワ新書juice)

ウィキペディア・レボリューション―世界最大の百科事典はいかにして生まれたか (ハヤカワ新書juice)

  • ウェブの発展と、Wikipediaの発展の対比
  • 個人間対立の解決策
  • 荒らしとの戦い
  • これからどうなる?

私がウィキペディアを知ったのは2003年頃で、丁度急成長の最中だった。そのころはスタブ記事が目立つ、整備されたての工業団地といった様子だった。現在では押しも押されもせぬ、インターネット上の一大情報源である。
本書では、ウィキペディアの成立過程と急成長の要因、それに伴う問題の発生と、それに対してウィキペディアコミュニティがどのように対処してきたのか詳しく書かれている。
この本を読むと、成立期のメンバーであるラリー・サンガーに対してよく思わなくなる(私だけ?)。どうも彼の神経質さ、融通の利かなさ、学歴に対する拘りのようなものが鼻につく書き方がされているためだ。実際そうなのかもしれないが。
彼が新たに始めたシチズンディウムというサイトは、記事の認証に厳密なプロセスを用いているため、ウィキペディアのように誰でも書き込めるわけではないが、その分正確性に優れる。
要はバランスなのである。無数に存在するオンラインメンバーの力をうまくコントロールできたならば、非常に大きな事を成し遂げられるということを、ウィキペディアは体現した。
唯、記事の増加速度は徐々に鈍っており、安定期に入ったウィキペディアがこれからどのような方向へ進むのかは、まだ誰にもわからない。本文にもある通り、「最大の敵は成功」なのである。
なお、あとがき部分はウィキペディアで文面を募ったらしく、非常によく書けている。時間がない人はこの部分を読めば、本文に書いてあることの7割方は理解できるのではなかろうか。